腰椎は5個あり、神経はこの5個の腰椎が縦に並んでできている管(脊柱管と呼ばれます)の中におさまっています。これら5個の腰椎は幾つかの靱帯や椎間板と呼ばれる一種のクッションのような働きをする組織によりつながれています。この椎間板は正常ではかなりの弾性を有しており、
腰椎を支えるとともに、この椎間板のおかげで腰椎はある程度前後左右に運動することが可能になっています。
年齢が進むとともに、この椎間板やその近くの腰椎骨に次第に変形が進みます。また脊髄馬尾の背側には背骨を結びつける黄色靱帯と呼ばれる組織がありますが、この靱帯も加齢とともに少しずつ肥厚がみられるようになります。 これらの変化が強くなると脊髄馬尾や神経が納まっている脊柱管が相対的に狭くなり、神経組織が圧迫されるようになります。この結果、下肢症状がみられたり腰痛が生じたりしますが、これが腰部脊柱管狭窄症です。
背部痛・下肢痛が主な症状です。腰部脊柱管狭窄症における下肢痛は安静時にはほとんど認めませんが、少しの時間歩行したり、あるいは直立の姿勢を保持すると出現し、しばらくしゃがみこんだり、腰をかけて休むと下肢症状が軽減・消失するという特徴があります。この症状がいわゆる「間欠性跛行」とよばれる症状です。症状が進むにつれて、連続して歩行出来る距離が段々と短くなり、ついには数mの歩行がやっとといった状態になります。この時分には両下肢は安静時にもびりびりとしびれるようになってきます。これら以外には直腸膀胱症状として、失禁や失便などの症状がみられることもあります。年齢は60〜70歳以降の方に多くみられます。
X線撮影、CTscan、MRIなどが行われます。
腰部脊柱管狭窄症に対しては、比較的症状が軽い場合には薬剤療法とし、数ヶ月内服しても症状の軽快が得られない場合や、進行する場合には、手術療法の適応となります。
当院では、腰部脊柱管狭窄症には以下に述べる手術用顕微鏡下での手術を行っています。手術に要する時間は90分前後です。
術後は腰椎コルセットを装着して翌日に起床し、歩行器を用いて少しずつ歩行を開始します。 術後7日目に抜糸し、術後10〜14日目に退院となります。簡単な仕事なら術後1ヶ月ごろから開始します。しかし、背骨の病気は長い経過で別の部位に新たに障害が出ることが多いため、通院は長い目で見る必要があります。長期的に見た場合、手術をした部位の上下の部位で新たに狭窄症が進行することもありますし、
手術を行った箇所の不安定性(腰椎が安定しない状態)が出現する可能性があり、追加の治療が必要になることがあります。